妄想三流建築士

キャストドール(球体関節人形)の写真などをぽちぽち載せるブログです。苦手な方は全力退避でお願いいたします。


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

そろそろ夜会の時間です

長男(Romeo)にくっついているキャラの小話未満の何かです。
イメージ写真はあるけれど、新しいものではありません。
畳みます。


 
□■□


6歳で、泣きわめくのをやめた。
8歳で、初めて父親と一緒にパーティーに出た。
化け物だらけのパーティーに。

ぴったりとしつらえられた礼服が苦しかった。
真っ黒の壁。真っ赤な絨毯。シャンデリアのクリスタルがぎらぎら光って、目がくらんだ。
父親の冷えた手が頭に載る。
親しみをこめて髪をくしゃくしゃにして、頬に触れてくる。

「そうです、息子です。エレオノーラの忘れ形見。目元のあたりがよく似ている。今年8歳になります。――そうだったね? 喋りなさい、ルディ」

父が命令すると、魂が冷える。
胸の真ん中に生まれた冷気が、すうっと指先まで満ちてくる。
死んだような気持ちになりながら、どこかで、魂ってこんなところにあるんだ、と思った。
自分は笑みを作り、はっきりとした発音で喋る。

そうです、8歳になりました。
先日、友人達を呼んで、華やかな誕生日パーティーを。
父さんは忙しくて来られなかった。でもプレゼントを頂きましたよね。
僕はとても嬉しかった。

父親は笑う。
俳優じみた、快活で魅力的な笑顔。
彼はこちらの頭を抱え、自分の体に引き寄せる。
高級なタキシードにうずもれて、上手く呼吸ができずに、こっそりあえいだ。
父親は頭上で、機嫌良く喋っている。

「わたしが忙しいせいかな。歳より物わかりがいい子に育ってしまった。そうでしょう? ええ……少し神経質なところがありますが、なかなか機転の利く子でね。期待してるんですよ。いずれ、わたしの持っているものを受け継ぐのは、この子ですから」

なんて羨ましい。
王子様ね、と、誰かが笑った。
自分は、あの頃から知っていた。
あなたの持っているもの。
あなたの得たもの。
それがなんなのか。
その本質が、なんなのか。

あの頃の衛星はまだ、内戦激化の前だった。
でも、あなたの中ではとうに戦争が起こっていたのだと思う。
あなたは母と、あなたの元親友が善意で作ったものを使って、いかにのし上がるかに必死だった。
そのためにあなたは、化け物どもと付き合って、戦争を起こすことさえ躊躇わなかった。

役者のような立ち居振る舞い、いつも微笑んでいる横顔。

あなたは王になるひとだった。
その王国は、神の居ない場所にあった。
自分ではあなたを止められないと、6歳のころに悟った。

では、その後は?

「この子はいずれ、わたしになりますよ」

父が笑って言う。
誇らしげに言う。
目の中でクリスタルの反射光が躍る。視界がうるさい。
目を閉じたかった。
耳もふさぎたかった。
うずくまりたかった。
帰りたいと言いたかった。
でも、そんなことをしたら後でどうなるのかを知っている体は、動かなかった。
何を望まれているかは知っていた。

だから、自分はにっこりと笑って言った。


僕は将来、父さんのようになりたいです。


周りの大人達が笑う。無邪気な子供の言いように笑う。
理想的に見える、父子の像に笑う。
お愛想で。ねたみで。憧れで。

笑う人々の声が、沁みてくる。
爪と肉の間から。
乾いた瞳の表面から。
沁みて、沁みて、冷たくなった魂にまで触れてくる。
魂は、ほんの少しだけ痛みながら融ける。


ここには魂の自由がない。


――さて。
それなりの時が過ぎ、自分は父になったのだろうか?
それとも彼の王国で、魂の欠片を買い戻すため、現世の金を積み上げているのだろうか。

戸口辺りで、グレンが熱心に端末でゲームをやりながら言う。

「用意できました? 女の子じゃあるまいし、あんまり時間かけるのやめましょうよ。そろそろ夜会の時間です。お化けがいっぱい、あんたのことを待ってます」


doll20130228000.jpg
スポンサーサイト

Comments


« »

08 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
プロフィール

八尋

Author:八尋
ウェットでもあってドライでもあり、ジオラマのように人形を愛でているぼんやりオーナー。
首都圏在住。

検索フォーム
QRコード
QR
カウンター

Archive RSS Login
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。